候孝賢「珈琲時光」

台湾映画
05 /04 2021
新宿ケイズシネマで、候孝賢「珈琲時光」 脚本は朱天文との共同。

松竹が候孝賢監督を日本に招聘して日本で制作した、台詞は全部日本語で、ロケ地も全部日本。台湾は一切出て来ないwヒロイン一青窈が、神保町で古書店主の浅野忠信と知り合い、喫茶店で珈琲を飲みながら趣味談義。一青窈と両親が高崎の実家と東京を往復、ストーリー性は特にないものの、2004年の東京をフィルムに美しく焼き付けた小津安二郎生誕百年オマージュ作品。

小津監督の生誕百年を記念して映画を製作するに当たり、松竹が白羽の矢が立てたのは、台湾人の候孝賢監督。ヒロインは日台ハーフの一青窈、彼女が一人娘。ダブルヒロイン的な日台ハーフの余貴美子が一青窈の義母。二人が高崎⇔東京の間で、何とはない日常の中、肉じゃが作って食べたり、心の交流繰り返す、日本人より日本人的感覚の新東京物語。

この度、本作をケイズシネマさんでフィルム上映で観ることができた。これは望外の喜びで、候監督が小津演出を意識して日本に乗り込んで、今から18年前の東京の美しい風景をフィルムに焼き付けていた、これを観ることができる幸せ。台湾と日本のハーフ・歌手一青窈が東京をガイド。

候監督の演出は、特にカメラワークが小津安二郎よりも小津っぽい(←そんな訳ないだろw)と定評があったらしく、でも候監督は手本にしていた訳ではなく偶然似ていただけ。候監督は日本の幾多の名監督を差し置いて小津安二郎生誕百年記念作品を撮るのだから、縁は異なもの味なもの。

一青窈が「ハナミズキ」の大ヒットで日本を代表する歌手になった頃の作品で、浅野忠信との共演だが、彼女には大スターのオーラが感じられ、顔立ちは地味だけど20代半ばにして清楚な美少女の面影を湛え、フェイクドキュメンタリータッチの作品の中で等身大の自分を映し出している。

候監督の作品は、台湾の名所旧跡のみならず、名も無い田舎町を一躍、観光地にしてしまう映像マジックがあったが、本作は舞台が東京ということもあり、候監督自身が日本の歴史も風土も自分は良く知らないのだ、という考えに根差して、敢えて風景描写以上のことをしなかったのだと思う。

候監督は、間違いなく鉄オタだと思う(笑)都電荒川線のビジュアルがよほど気に入ったのか、作中でくどいほどに何度も登場。この電車、ロマンポルノでは定番中の定番で使われたクラシックスタイルの情緒あふれる路線で、日活の関係者が「この電車、イイですよ」と助言したのかなあ。

日本人なら何とも思わないような、山手線や京浜東北線にフォーカスを当てるのもユニーク。お茶の水駅付近の中央線快速、中央線普通、地下鉄丸ノ内線が三本交差する場所、絶対に出てくるだろうな、と思ったらやっぱり出て来た(笑)人間同士が交錯する様を電車に例えるのに最高のロケ地だ。

古書店の店主を演じる浅野忠信は重度の鉄オタで、一青窈に電車のCGで作ったユニークな芸術作品を自慢したり、収音マイクを持ってヘッドホンした異様ないで立ちで山手線(←なんで山手線なんだよw)に乗り込んだりする。私は浅野忠信の鉄オタ姿を見て、候監督自身の姿?と思ったw

一青窈の実家は群馬県高崎市吉井にあり、最寄り駅は「吉井」この駅は本作の舞台となった駅として永遠に記憶に止められたい。一青窈の両親は小林稔持と余貴美子(義母)実の母親は登場しないが台湾人だったっけ?一青窈は台湾に恋人がいて妊娠するが結婚せずシングルマザーを選ぶ。

改めて調べてみてびっくりしたのは、リアルに一青窈の父親は台湾人(九份の炭鉱経営者!)で母親は日本人。本作で義母を演じる余貴美子も父親は台湾人で母親は日本人。客家系とか九份とか、監督と出演者の共通点があり、日本と台湾は遠いようで近い。私は日本人が台湾に親近感を持つのは当然と思う。

物語がほとんど動かないw中で、一青窈が暮らしている鬼子母神から電車を乗り継いで高崎の吉井にある実家に行く、逆に両親が高崎から都電荒川線に乗って鬼子母神に一人暮らしする一青窈の家を訪れる。特に話題も無い日常生活の中で、唯一の気がかりが一青窈は誰といつ結婚するの?

興味深いのは、余貴美子が隣家にお酒を借りに行くシーン。候監督は古き日本の良き伝統「お隣同士の貸し借り」を演出したのかと思ったら「グラスも貸してくださいます?」家に戻ると小林稔持が借りて来たw日本酒をグラスで一杯やってる(笑)これ、ギャグのつもりで入れたのかな?

タイトルにある「珈琲」は、鉄オタ古書店主の浅野と、台湾出身の著名な音楽家江文也を研究する一青窈が知り合い、珈琲を飲みながらたわいもない話をする。浅野は電車に夢中な少年っぽい大人で、一青窈は台湾の恋人から「こっちで一緒に暮らさないか」とタイ行きを誘われている。

一青窈が台湾人の恋人が起こしたタイに本社がある傘製造会社、厦門にも工場があり、結婚して一緒にタイにいくべきかどうか?年老いた母親が高崎で暮らしている。自分は鬼子母神のそばに住む東京人だけど、やっぱり両親のことは気になる。小津的でかつ、かなりシビアな設定だけど、まあ珈琲でも飲んで、まずは落ち着こう。

珈琲時光
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世の中に映画は二種類しかありません。成人映画か、それ以外か、です(笑)
ロマンポルノを追っかけるうちにピンク映画もいっぱい観るようになってしまいましたw