小谷内郁代「境界線の向こう側」

ENK
02 /13 2024
光音座で、小谷内郁代「境界線の向こう側」 脚本は今村千絵との共同。

ウリ専してる弟分(西岡秀記)と同棲中のヤクザな便利屋(竹本泰志)が親の望みで結婚相手に選んだレズ女(佐々木麻由子)の妹分(麻生みゅう)が怒って乗り込み、仕事で百万円の壷割っちゃって逃避行先で出会うホモ爺さん(野上正義)との温かい身体の交流。同性愛カップルの日常と悩みを爽やかに描き出す青春群像劇の佳品。

イケメン竹本泰史と西岡秀記。西岡にウリ専させるダメンズの竹本はレズカップルの佐々木麻由子と偽装結婚しようとするんだけど、お相手の麻生みゅうに乗り込まれ、事情あって3人で逃避行のロードムービーは老いたガミさんと出会いうことで愛に正直に生きる大切さを説かれるんだよね。

本作は小山内監督のデビューという事でご祝儀か実に8人も出演者が名前を連ねる。主演の竹本泰志(名義は八幡現代)西岡秀記を始め、出演順に佐野和宏、森山龍二、神戸顕一、野上正義。それにレズカップルとして佐々木麻由子と麻生みゅうまで、個性派俳優がぞくぞくと登場。

21世紀のピンク映画を代表する男優である竹本泰志と西岡秀記がダブル主演で濡れ場もどエロくこなす、ヌケるクオリティがかなり高い作品だが、これって成人映画では少数派でしかもこれ一本きりしか撮ってない女性監督の手によるものなので、なかなか感慨深いものがある。

成人映画界の女性監督の代表選手は誰に聞いても同じ答えだろう。浜野佐知、吉行由実、珠瑠美、ええと、それ以外にもいたっけ?いるんです。小谷内郁代は旦々舎作品などで助監督を経験し本作で商業映画デビュー、その後は一般映画に活動の拠点を移してしまったようだ。

何といってもね、竹本泰志(本作は八幡現代名義)22歳、西岡秀記19歳。特に西岡はレイフ・ギャレットを思わせる長髪でカワイイの♡小谷内監督も彼にぞっこんなのか5回中4回の濡れ場が彼なんだよね。森山龍二や神戸顕一に金で買われて身体を売るドナドナ感が堪らない!

特別出演のガミさんも凄く頑張っちゃって、イケメンの竹本と昔の恋人に似てるからと布団の中で迫りチングリ返しでガンガン突かれるの役得(笑)竹本の口癖は「バカ、ちょっと待てよ、バカ」せっかちな性格でおっとり型の西岡と好対照のいい雰囲気のカップルなのよね。

本作のキモはゲイポルノでは本来は禁じ手じゃないか?と思うレズカップルも登場させる。竹本が親を安心させるための偽装結婚のお相手はネットで知り合った佐々木麻由子なんだけど、とにかくなかなか登場しない。最終盤でガミさんと別れた後にラスボス的に登場ですからw

ゲイにとって共通の敵はわがままな女、ということで(ということで、じゃねーよw)麻由子の教え子でレズ恋人の麻生みゅうを思いっきりわがまま娘で竹本と西岡をイラつかせておいて、最後に実はイイ奴だったみたいな終わり方。これ女性監督じゃないと描けないと思うね。

ロードムービーとして非常に映画としてよく完成されていて、特に竹本たちがガミさんを道で拾ってからの道中、昔愛した恋人に会いたいガミさんがあまりに色男の竹本に「昔の恋人とあんたはそっくりだ」胸に飛び込んでFUCKを迫るシーンは思わず泣いちゃったよ、俺。

竹本は車に乗ればすぐガス欠してしまう使えない便利屋なんだけど、恋人は内気でジャニーズ風の長髪インドア西岡。竹本は社長の息子だが西岡は天涯孤独。二人の同棲生活を親に認めてもらい金銭的に安定したいと思って竹本が選んだ手段、それはレズカップルの女と偽装結婚することだった。

ネットに詳しい西岡は普段はウリ専に使ってる知識をフル活用して同性愛の男女が家庭を持つためにパートナーを探すシステムに竹本を登録。後は任された竹本はメールで連絡をくれた麻由子とたちまちネット上で意気投合し、結婚を前提に一度直接会う段取りまではサクサク行ったのだが。

ヤクザな佐野は飲み屋のマスター。便利屋家業の竹本に目をかけるが100万円の壷を落として割ったドジの時点でブチ切れ、ぶん殴ったw健気な西岡はネットを駆使したウリ専で竹本と暮らす家計を支え続け、新規客はどスケベな森山。七三ポマード分けに黒ぶちメガネ。最初は西岡にリードされてゲイ体験するも、二回目からは横柄に変貌したw

竹本と西岡が同棲する部屋に乗り込んでくる女、それが麻生みゅう。彼女は麻由子のレズ友であった。学生時代から変わり者でイジメに逢っていたみゅうを守ってくれたステキなお姉さまが麻由子。私の大切なお姉ちゃんを取るなんて許せない、と竹本に文句を言いに来たのだ。

ところがここに「壷割って100万円どうするんじゃ、ゴラー」と佐野が乗り込んで来たからさあ大変!竹本は腹を一発殴り気絶させると、後先考えず白のワゴンで逃避行に出発。西岡とみゅうも、本人は訳が分からないが連れて行かれてw向かうは伊豆。でも持ち金はあっという間に尽きてしまった。

農夫の神戸顕一が立ちションしているのを目ざとく見つけた竹本はこの娘2万でどうですか?とみゅうを差し出すが、神戸は西岡を指さしでニヤッ(笑)こうして西岡は本作で3回目の援助交際wワゴン車はひたすら伊豆へ向かった。途中でヒッチハイクする老人がいる。ガミさんじゃないか!

実はガミさん金持ちで、豪華な旅館にみんなで泊る。「おじいちゃん、なんで伊豆に来たの?」ここで「いや、わしはな、実はな」と口ごもる野上。夜、竹本が野上と一緒の布団で寝ていると(←その時点で分かるだろw)野上は「昔別れたわしの恋人とあんたが瓜二つなんじゃ」

竹本に抱かれアンアンよがるガミさんは、西伊豆に住むという元カレに会いに来たのだった。彼はゲイを隠して結婚していた。野上を車から降ろして、下田駅までやって来た麻由子を迎える。みゅうが叫ぶ「あのおじいちゃんみたいになっていいの?自分にウソをついて生きるなんて、良くないわよ!」

竹本はようやく駅に迎えに来た麻由子に切り出された「結婚の話、やっぱり、無かったことにして欲しいの」ワゴン車がガス欠でもう会えないかも知れなかった麻由子と伊豆で直接会って、自分の気持ちに素直になれた竹本。これは偶然ではない。野上がもたらした必然であった。

野上は西伊豆まで遥々やって来たが、引っ越してしまった元カレには会えず仕舞い。でも、したいことを思い残さずやった満足感に溢れていた。竹本は決心した「オヤジに西岡のことを紹介して、一緒に暮らそう」もう竹本の車はガス欠しないはず。マメな西岡がいるから。

境界線の向こう側
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ザヴィエル「狼の獲物たち」

ENK
01 /07 2024
光音座で、ザヴィエル「狼の獲物たち」 脚本はスティーヴ・ビルフィールド。

紅顔の美少年ダニエル(ヨハン・ボーリック)は「僕はゲイ?」自問自答しつつゲイバーで憧れのバーテンに告白できぬままゲイの情交がチェイン・リアクションの如く駆け巡り、肉欲と禁欲の挟間の苦悩の末に念願のバーテンと結ばれ、絶ち切る連鎖にバンザイ!観念的で幻想的なガチFUCKがエロい、ボーイズ・ラブ・ポルノの名作。

海外のゲイポルノというとなかなかキョーレツな印象があるけど本作に関してはゲイポルノ版エマニエル夫人な感じで意外とサクッと観られる。イケメンが多いしタッチが観念的で幻想的だからナマナマしいFUCKなのにどこか現実じゃないようなフワフワした感じが観やすさにつながっている。

ボーイズ・ラブとは書いたけど、やおい系漫画大好き腐女子が観たらきっとドン引きするに違いないほどFUCKシーンがエロい。ソフトフォーカス何てもっての外、前貼りなしでちゃんとチンコ勃起させてFUCKしてヌードシーンは股間をボカシで全処理してるハードコア・ゲイポルノだ!なにせ石鹸の香りなんて全然しませんからね。オスの体臭あるのみ!

この作品を観ていて、今泉浩一監督の「伯林漂流」思い出したんだよね。ゲイは一夫一婦制に縛られない。常にパートナーをとっかえひっかえできる野獣のようなセックスが出来るのが特権で、だから不特定多数のイイ男と行きずりの情交を重ねてこそ漢!と光音座で実感した次第w

1995年に英国で公開された、78分尺のオリジナル版「ザ・チェイン・リアクション」をENKプロモーションが日本国内公開のため60分に短縮編集したものが本作らしい。確かに途中で物語がポンと飛躍している場面があって???となるがそのせいなのだろう。原版も観てみたいなあ。

以前、「ラテンボーイズ・ゴー・トゥー・ヘル」を観た時も思ったけど、21世紀初頭のENKは海外の優れたゲイポルノ作品を日本に紹介する重要な役割を占めてたんだなあと思う。国内で新作が無理なら海外からの買い付け出来ないのかな?もっとたくさん海外のゲイポルノ観たい!

冒頭のタイトルインやラストの出演者スタッフ紹介テロップに洋画を感じる。どこか米国の洋ピン黄金時代の雰囲気を感じさせるのよね。黒のバックに白字のアルファベットでテロップが出るだけなんだけど、劇場で観ると「ああ、俺は今、洋画を観てるんだなあ」実感する。

英国で制作されたが舞台はプラハ。登場人物は全員、長身の白人青年ばかりで合計10人も揃えました!な豪華さ。選り取り見取り色好みできそうだけどイマイチ10人のキャラが被ってると思うのよね。でもクオリティは高いですよ。街で見かけたらハッとするような美少年ばかり。

洋ピンゲイポルノには全く明るくない、というよりこれはボーイズラブの方のジャンルだと思うので、俳優とかさっぱり訳ワカメなんだけど、主役で東欧スロバキア出身の美少年、あの「VOGUE」誌のモデルとしても活躍していたというヨハン・ポーリックは覚えた。彼は他にもゲイポルノの大ヒット主演作が何本かあり、これからコンプリートが楽しみだ♪

物語はね、観念的ではあるけど主人公のダニエルが恐々とプラハのゲイカルチャーに近づいて行き、自らの性癖をどんどん露にしていく。その過程で9人にも上るイケメンゲイたちのセックスの連鎖が彼の目の前を通り過ぎて辛抱堪らなくなるんだよね。ああ、愛しのバーテンさん♡

これでもかと投入されるイケメンゲイたち。俳優の名前と顔は一致せずともキャラ付けがはっきりされていて観やすい。プラハの旧市街に佇むゲイバーが舞台となるので、カウンターの中に立つバーテンダーとその周囲の客たちやその交遊関係が連鎖反応していく面白さだ。

バーテンダーにはボーイフレンドがいて、常連客に革ジャン男。ダニエルは男娼を買ってしまいウェイターとボディビルダーとすれ違う。男娼とFUCK中に乱入する兵士にワロタwダニエルを冒頭で激写する写真家はキーマンであり、常連客にはダニエルが一目惚れした大工もいる。

濡れ場はフェラから全身愛撫、ベロチューから正常位や対面座位、背面座位でのFUCKまで全てホントに挿入してるんじゃない?と思わせるど迫力で、カメラがアート風に暖色系、カラーとモノクロの切り替えとか凄くこだわってる。何となく観るの勿体ないほど作り込んでる。

じゃあ本作の感想を書こうとすると、全てはゲイかもしれないと思っていたダニエルが勇気を出してゲイバーに行き、ゲイ仲間たちの鎖に自分も入りたいと望むようになり、念願叶って入って憧れのバーテンと熱くFUCKして「やり切った!」爽快なラストに繋がるヤリまくり映画。

冒頭、ヨハン少年が「僕はゲイ?」自問自答しながらプラハの旧市街。人目を気にしながら勇気を振り絞って入ったゲイバーでカウンターに立つバーテンの青年に一目惚れ。「瞳が穏やかな星のようだ」どんだけ詩的なヨハン少年(笑)でも彼は詩的ではない肉欲の世界を知る。

憧れのバーテンがボーイフレンドとキスする光景に嫉妬したヨハン少年はジージャンを袖で切ってるワイルドな男娼を呼び、彼とワンナイトラブ。でも擦れ違うウェイターやボディビルダーを見て「まあ、イイ男!」浮気癖もありそうだ(笑)男娼とベッドルームで一発ヤルぞ!

でもね、男娼と二人きりになっても庭仕事してるイケメン大工に目移りする実は真性ゲイのヨハン少年。全裸になって男娼にフェラしてもらい気持ち良くなってさあこれからという時に、いきなりドアが開いてガタイのいい兵士が猛然とベッドにアタックして男娼抱き始めワロタw

ビビってその場を逃げ出すヨハン少年だったが、兵士は男娼をノリノリでガンガン犯す。と思ったら男娼が舌なめずりして兵士の股間に顔を埋めバキュームフェラにワロタwもうすっかり興奮してしまったヨハン少年はゲイバーに戻ると常連客のイケメン革ジャン男に狙いを付けた。

妄想の中で革ジャン男と熱烈FUCKするヨハン。でも革ジャン男はフラッと入って来た大工と店を出て、激しくFUCKする。その後、ウェイターがぞっこん惚れてるボディビルダーを訪れアクロバチックな体位でガンガン愛し合い、ヨハンは思うのだ「ああ、俺もこの鎖に繋がりたい」

ボディビルダーとウェイターのFUCK中、サウナでシコシコとマスを掻いてるイケメンがバーテンのボーイフレンドで、彼は一枚の写真をバーテンに見せびらかす。それは写真家がプラハの街中でヨハン少年を無断で撮ったポートレート写真でこれが後半にキーアイテムとなります。

バーテンはボーイフレンドと添い寝のベッドからこっそり抜け出し写真家の元へ。ボディビルダーと激しく愛し合った直後の写真家はスクリーンにゲイ同士のFUCK写真を映写しながら、写真を見て興奮してボッキボキのバーテンに抱かれる。その写真の中にはヨハンの姿もあった。

バーテンが恋しくて堪らないヨハン少年は欲情の導火線に火が着き、ゲイバーの前で座り込んでじっとバーテンを待っていた。すると、写真家との情交を終えて姿を現したバーテンがヨハン少年をガン無視して店に入って行くではないか。でもヨハン、もうバーテンに夢中なの!

全裸のヨハンがゲイバーのカウンターに座り、股間に顔を埋めたバーテンがバキュームフェラ。スッと入れ替わると今度はバーテンがカウンターに座りしなだれかかるヨハンに熱いキスをかまし、そのまま全裸で床に座り込む二人はボカシがかかってるとは言えチンコ丸見えだw

ヨハンの目の前にしゃがみ込んだバーテンはヨハンのチンコを絶妙なテクでシゴきあげ、もう辛抱堪らんヨハンは余りの気持ち良さにアンアン悶えた後、バーテンに貫かれ天にも昇る気持ち。鎖はこれで最後にしよう。フィニッシュ迎えたヨハンは叫ぶ「イッツ・フィニッシュド!」

狼の獲物たち

石本俊治「17センチの神話」

ENK
11 /05 2023
光音座で、石本俊治「17センチの神話」 脚本は薫木陽子と山部青人。

スターを夢見て喫茶店でバイトするオサムは客の人気歌手・夏木に17センチ(=7インチ)シングルの新曲デモテープを渡され、マネージャーを介して枕営業の世界に巻き込まれ、男色映画プロデューサーの餌食になる寸前を、大麻所持で失踪したはず夏木に救われ、そして結ばれた。昨今話題の性被害問題を先取り、告発する良作。

タイトルの17センチってチ〇コの長さと思ったでしょ!でもね、違うんです。17センチシングルには歌手の熱い想いが込められてる、というゲイポルノとは全く関係ないテーマで(笑)その分、濡れ場は売れるためなら枕営業という男色も絡むとまるでジャ〇ーズ問題を見てるようw

この作品、ネット配信も無いしレビューとか感想もほとんどSNSに上がってない。そもそも石本俊治って監督は何者なんだ?から始めるしw歌手のもんたよしのりが主演した「愛しき日々よ」に同名の助監督がいるのだけれども、同一人物なのかなあ?音楽繋がりあったのかなあ。

出演者に関しては、80年代の成人映画も相当な本数観てる私でも全く分からない。完全にお手上げwだから逆に配役で観ることが出来るから妙にリアリティがあるのよね。スターを夢見る青年たちが業界の枕営業に翻弄される、主役が女性だと痛々しくなるが男性ならそうでもないw

手堅い青春映画の出来栄えであるのに加えて、恐らく本作のためにオリジナルで作ったんじゃないのか?これ。冒頭で♬シンシア~♬のサビが印象的なバラード。そして17センチシングルとして発売するはずの新曲は♬ハートが燃えてオーバーヒート♬みたいなベタな歌詞が麗しい。

ラストで主人公が歌う曲の、タイトルくらい出してもいいんじゃないかと思うけど、ひょっとしたらどこかからの使い回しだったりしてwサビでシャウトするのが♬エンガチョー!♬に聴こえるんですけど(笑)ホントはなんて歌ってるんだろうか。字幕が必要だったように思いますw

濡れ場は60分の尺の中に4回しか無いし、挿入してるのは序盤の2回のみ。撮り始めたら監督が没頭して濡れ場忘れたんじゃねーの?と思う位にストーリーで語るんだから青春映画なのでそれもまたヨシ。全裸の青年2人が体育座りするカットなどはアートすら感じる挑戦的な演出w

歌手を夢見て喫茶店でバイトしながら店長と同棲する主人公が可門良なのかな?甘いマスクでクリスタルキングのハイトーンの方の人思い出したw一方、主人公にデモテープで新曲吹き込んで見ろと挑発する売れっ子歌手の方が佐藤和夫なのかな?ジュリー意識してるイケメンw

この主人公の青年、若い頃の牧村耕次にも似てるのよね。齢は大体同じだろうから最初は牧村の変名なのかな?とさえ思ったけど、演技力がおぼつかないのと、同性が好みそうな色気を感じるのよね。オサムは最初から目を付けられてたんだと思う。男色プロデューサーの眼鏡に適うってw

いや、でも「悪魔のようなあいつ」でジュリーが演じてた配役が加門良だし、いやいや、加門良って役者さん実在するけど別人だろうなあとか、加門亮っていう演歌歌手もいるんか(さすがに別人だろw)主人公を演じてる俳優の名前が分からないって恐らく初めての体験だ(笑)

話としてはどストレートの青春映画で、歌手を目指すオサムと既に人気歌手の夏木の出会い。その気になって17センチシングルの(もういいよw)新曲をテープに吹き込んだオサムが大麻所持騒動で失脚した夏木に代わって芸能事務所に抜擢され枕営業の餌食になりそうになるお話w

枕営業を強要するおっさんは映画プロデューサーの設定で、80年代当時はまだ映画が芸能界で大きな影響を持っていたんだなあと思うと隔世の感があるw彼は夏木に枕営業を強要しスキャンダルが起きるとポイ捨て、次に人気歌手の座を狙うオサムに枕営業を強要しベッドの中へ。

この枕営業のおっさんが、風呂に入るとオサムを待たせてジャジャジャーンと登場した時の、レスリングのユニフォームに札束で兜と鎧を作ってオサムに襲い掛かるシュールな場面に爆笑(笑)ただただキモイよwでもねえ、金と権力に任せて美青年のチ〇コ味わおうとするんだよ。

そもそもオサムって未成年で、無理やり酒を飲まされてホテルで「人前で芝居するのは恥ずかしい。だから羞恥心を取り除くために服とズボンを脱げ」命令されて、風呂上がりのおっさんを待ってたら札束で鎧兜でしょ(笑)ハイエナのように襲い掛かるおっさんキモくて仕方ないw

ここに大麻でラリっていたはずの夏木が飛び込んで来て「俺のことを無理やり犯しただろ!」おっさんを殴りつけて、みじめなおっさん、芋虫のように札束鎧兜のままスゴスゴと退場するの巻(笑)これ、どう見てもモデルがいるだろ!しかもこの作品。1984年の制作だかんね。

まあ何が言いたいかと言えば、本作がもっと世に出ていたら、芸能事務所の偉い人が未成年にパワハラで男色けしからん!という告発がもっと早く出来たと思うのよ。と言ってもこれ、観てる人が随分と限定されるゲイポルノですから(笑)むしろストレートに描けたのかなあ。

最初の濡れ場は人気歌手・夏木がマネージャーとベッドで一戦交えながら、映画の主役を射止めるためプロデューサーと寝ろよ、みたいなw枕営業を勧められ、夏木も意外に尻軽で(笑)プロデューサーのスケベそうなおっさんに正常位から立ちバックでガンガン犯されるの図。

ところがね、挿入してる濡れ場はこの2回で終了で、3回目はオサムが夏木にデモテープの件でホテルの1室に呼び出され、全裸のオサムを夏木がFUCKしようとするが「ダメだ!」頭を抱えてFUCK未遂。でも翌朝「お前のケツはサイコーだったぜ」書き置き残してそのまま消えた。

4回目の濡れ場は、ゾンビみたいな映画プロデューサーがレスリングコスチュームに札束で鎧兜して武装、オサムに襲い掛かるが全身を舐めたり愛撫してる時に夏木が乱入して未遂。でもね、おっさんが芋虫のように這って退場した後に二人きりになるんだよね。しかも全裸で!

ここはオサムと夏木の濃厚なガチFUCKでキメる!と思うでしょ?でもね、キスを交わした後にいきなり画面は外に飛んで、線路の上で体育座りしているオサムと夏木をロングショット。二人がじっとカメラ目線で観客を挑発するドキドキあるけど、新曲流れてエンディングですからw

冒頭、モノクロのカッコイイ3人の写真をモデルチックにタイトルイン。喫茶店にグラサンのカッコマンがやって来て、オサム青年の「美味しいアメリカンが自慢です」のスター夏木の答えは「フツーのコーヒー」嫌味な野郎だな。最悪の第一印象は次の来訪で更に悪くなるw

店長が不在で「フツーのアメリカンしか淹れられません」夏木はオサムの淹れたアメリカンを「マズー(-_-メ)」床にこぼし「金は払うよ」でもオサムのヘッドホン付けて踊っていたリズム感を見逃さず「これは俺の新曲だ」デモテープ渡し、半信半疑で歌を吹き込んでみるオサム。

オサムの同居人でもある店長は、ルックスも踊りもオーディションでケチョンケチョンにけなされて田舎に帰る決意。デビューのチャンスを掴んだオサムに「コケにされるのがそんなに怖いんか!」背中を押す。そんな最中、スター夏木はファンにキャーキャー言われる裏で枕営業中w

スケベオヤジに抱かれるのと引き換えに映画の主演をゲットする夏木。でもオサムのことが気にかかる夏木はホテルに呼び出すと「スターになりたくないのか」オサムを押し倒すがコトに及ばず「こんなに狂おしいのに・・・」書置きを残して失踪した夏木は大麻所持で指名手配に!

夏木の映画主演の話はチャラになり、デモテープから夏木のマネージャーは「そうだ!」(そうだ、じゃねーよw)オサムをプロデューサーに売り込もう!夏木に代わるニューアイドルを作る!で、枕営業に派遣されるオサムは金の亡者で権力をカサに着る男に犯されかかった。

ここにジャジャーンと夏木が登場、ダウナーなブリティッシュロックを背景に廃人のようだった夏木は窮地のオサムを前に超人のように蘇り救出した。全裸で見つめ合う夏木とオサム。もう二人の邪魔をする者は誰もいない。全裸でキスして、線路の上に体育座りでじっと観客を見つめる二人。

17センチの神話

鈴木章浩「天使の楽園」

ENK
06 /06 2023
光音座で、鈴木章浩「天使の楽園」 脚本はタカトシコ、黒澤潤との共同。

夜のハッテン公園でホモ狩りに遭い死んだAV男優タカチ(今泉浩一)との思い出を回想するAV界隈のライター玲子(葉月螢)とADのシンペイ青年(末広あきら)が、故郷高知に帰った時にタカチから聞いた「みんな天使に見える!」サイコーの笑顔。でも彼にとって東京は違った。淡々とした日常描写の中に残酷で醜悪な現実というテーゼが心をえぐる秀作。

本作には出演者でもある大木裕之の影響がみられる。善良な人間も悪魔に変える大都会・東京と、天使のように清らかな人々が集う楽園・高知との対比。清らかな魂の証明であるキラキラと輝く光と、薄汚れた魂の醜さをも覆い隠す漆黒の闇。天国と地獄の対比こそがこの映画のベース。

挿入歌として、マーブルシープ&ザ・ランダウン・サンズ・チルドレン(角谷美知夫)と割礼(宍戸幸司)が使われる。前者はAV男優の死を弔う都会の怪しげなパーティの象徴として、後者はそんな中で生きているシンペイと玲子の息苦しさを象徴するような悲しく切ない歌声だ。

本作は基本的には難解なのだが、じっくり観ると、意外にも映画の基本パターンである男女の三角関係が軸である。前半30分はAV男優のタカチとライターの玲子と玲子の家に住み着いたソラオ(黒岩アキラ)後半30分はソラオの退場により、ADのシンペイが三角関係に入り込む。

冒頭、一瞬だけ登場する、タカチが階段の踊り場で倒れている場面。彼は死んだ。玲子は山崎さん(←誰?)主催のパーティに誘われ、一人は嫌なので顔見知りのシンペイを誘う。行ってみると、角谷美知夫のダウナーな曲が流れる退廃的な空間、それがタカチの追悼パーティーだった。

退廃的な空間をより怪しげにする、一本のAV。ゲイ青年だったはずのタカチが女優に手コキされ悶えている。これは何なのか?シンペイはAV業界に身を置きながら魂は浮遊していた。公園のハッテン場で声をかけられるとトイレでハッテンしてしまう。でも自分の性癖が分からない。

玲子の部屋に突然、棲みついてしまった猫のように可愛いソラオ。しかしストーカー男がいる。タカチだwウリ専を斡旋して金を稼ぐタカチ。でも嫉妬心から客の車に「死ね」と落書き。玲子のアパートでソラオを待つタカチのことが玲子は気味が悪くて仕方ない。でも状況は一変する。

猫のようなソラオはある日置手紙を残して玲子の元を去った。アパートに来たタカチに、玲子は「彼は飛び降り自殺した」とウソを言い「なーんてね」二人とも孤独だったのだ。そして、タカチも東京を去った。故郷の高知に帰ったのだ。彼の愛称・タカチとは出身の高知の意味だった。

玲子にタカチから手紙が届く「男の人を連れて遊びに来てください。実家が旅館なのでタダです。高知は戻り鰹の季節です」玲子は思い切って、別に恋人ではないシンペイを誘って高知に向かう。土讃線の旭駅(←駅舎がイイ味出してるw)で二人を出迎えるタカチ。旅館へと向かう。

三人で戻り鰹を味わったあと、旅館の部屋で川の字になって寝る。真ん中が玲子でその両隣にタカチとシンペイ。玲子は「もうやったの?」とタカチをからかうが、ここでタカチが驚きのカミングアウト「僕のお父さんはゲイだったと思う。でも、一度も男の人を抱くことはなかった」

シンペイが声を荒げる「どうして分かるんだよ!」タカチにとって高知は最高の場所だった。周りの人たちは温かく、みんな天使に見えたのだ。三人はドライブに行き、小川で水遊び。玲子が「ちょっと、しっこ」と場を離れる。シンペイとタカチは思いがけず二人きりになってしまうw

シンペイが昔話する「高校時代に僕に告白した男がいたけど、無視した。大学に進学した夏、彼は校庭で自殺した」この瞬間、玲子が水遊びする無邪気な笑顔をキラキラと光いっぱい反射させ、少し落ち込むシンペイにタカチがそっと優しく肩に手をかけた。その瞬間、全てが変わる。

ドライブの行先は大木裕之が住む山奥の一軒家。友人たちが集まり地酒で酒盛りをする。ずっとこの幸せが続けばいいのに、と思うような光景だ。そして旭駅でシンペイと玲子を見送るタカチ。二人は再び悪魔たちの棲家(笑)東京に戻る。シンペイの心中に、性癖の変化が現れる。

追悼パーティでAV女優が声を荒げる「あいつ、ホモだったんだよ、全然、勃たねえし」タカチのAV男優の日々は地獄だったのだ。パーティの帰り、シンペイと玲子は「飲み直そうよ」玲子のアパートで全裸になったシンペイと玲子は、身体を求め合う(←ゲイポルノで濃厚FUCKだw)

でも、シンペイは玲子を抱きながら「こんなことでいいのか?」と自問し続ける。ラスト、玲子とシンペイに励まされ再上京したばかりのタカチは公園でホモ狩りにあい。階段で行き倒れていた。彼の悲痛な魂の叫びで幕を閉じる「僕は欲しいものは、いつも手に入れることができないんだ!僕を優しく抱きしめてよ!」

天使の楽園

武田英幸「海から来た男」

ENK
07 /25 2022
光音座で、武田英幸「海から来た男」 原作は山川純一。 脚本は剣崎譲と西口明寛の共同。

妻に見捨てられ、ハッテンスポットで有名な紀伊半島の海岸に向かう中年男性の平山。サーファー姿で海から来た青年・小津に心ときめき、彼の入水自殺した恋人の無念を思いながら、砂浜で熱く結ばれ夕焼けの中を二人、海に入って行った・・・動く薔薇族的な実用性を感じる抒情ゲイポルノ。

90年代から21世紀初頭にかけて、ゲイポルノには本論である男同士の濡れ場以外のいわゆる「遊び」の部分がどんどん増えて来て、それは別に悪いことじゃないけど、どストレートに男同士の愛の物語を描くとこんな感じになるのか、と思った。そういう意味では非常に良心的な作品。

動く薔薇族と言うのは私が付けたキャッチフレーズなんですが(笑)それも伊達じゃなくて、山川純一が描いた原作漫画は実際に薔薇族に掲載されて大ヒットしたらしい(残念ながら私は未読)1991年、ゲイポルノはまだ黎明期、こんな劇画調の作品もあったことに大層、驚いた。

ゲイポルノはENKとオーピーの2社が制作していて、通常は60分尺と決まっているのだが、本作は50分しか尺が無い。始まったと思ったらあっという間に終わってしまう感じ。中年男性の心情をゆっくりしみじみと丁寧に描き出すので、時制としてはほとんど進まないままに終わる。

出演者は梅田なつき、早瀬勇治、森健二の3名。いずれも成人映画、あるいはゲイポルノに絞っても見かけない人ばかりで、配役との一致は諦めましたw原作漫画では主人公の中年男性を平山、紀伊半島の海岸でサーフィンする若者を小津と名前が付いているので、それで構わない。

雑誌「薔薇族」に掲載された原作漫画は1984年に描かれたらしく、映画が公開された1991年との7年の時の経過はかなり大きい。とは言え、ゲイポルノ自体がまだ手探りだった時期の作品と思うから、かなり原作の持ち味をそのまま映像化したのだろうなあ、と勝手に想像したりする。ああ、漫画読んでみたいw

原作漫画はハッピーエンドらしいけど、映画に関しては完全にバッドエンドである。入水心中をテーマにしたダークカラー、80年代のアダルトビデオでよく観た作風で、軽薄短小に反発するように、成人向けのエロには背徳的な暗さが大人への階段のようでどきどきしたもんだ。

濡れ場はセミドキュメントタッチで生々しいが、どこか上品な感じも漂わせている。物語も小ぶりに纏まっていて、ノンケの平山が恋人が入水自殺したサーファーの小津と出会って線香花火のように一瞬だけ煌いて消えていく花火のような儚さ。80年代テイストのAV的な世界観。

紀伊半島のとある海岸とされる、絶景の手前に砂岩で作られた断崖絶壁が聳える殺風景で異様な情景、これどこなんだろう?観る人がみたら和歌山県の代表的な観光名所だったりして(笑)でもハッテンスポットとして全国的に有名、みたいな使い方なので実名は出せないよねw

主人公・平山の主観映像として展開されていくので、夢と現実の切れ目が分かりにくい、というより無駄を完全に省いていて、最小限のエピソードだけで繋ぐ代わりに一つ一つのエピソードを眩暈がするぐらいにw徹底的にずっぽりと描き切る。こんなゲイポルノは初めて観た!

小津が亡き恋人との熱烈なキスシーンを回想して、そこからラブラブだった愛欲の日々が蘇り、夕焼けの海を背景に平山が小津と熱烈なキスシーンでその回想は海に消え去り、二人だけの世界から入水心中へと繋がっていく。暗い話と言えばそれまでだが、日本伝統の心中ものだ!

サーファーの小津はイケメンだけど顎が島田紳助ばりに尖ってて、中年男性の平山はフツーのリーマン仕様。それが濡れ場になると凄いんですw演技は棒で台詞読みも単調な中、ディープキスに入った途端に画面が燃え上がり、恐らくニセマンだと思うけどFUCKシーンもど迫力だ!

映画は中年男性の平山がくたびれた表情で天王寺駅から南紀白浜行きの特急くろしおに乗って思い出のハッテンスポットに向かう場面から始まる。彼はそのスポットにもう一度行きたい。妻と息子に見捨てられ、絶望的に傷ついた心を癒すため、本能的に紀伊半島の洞窟に向かった。

妻が家出する時に平山に残した手紙「あなた、女一人も幸せにすることができないなんて、もう諦めました。子供と一緒に出て行きます 泰子」息子のヒロシもいなくなってしまったがらんどうの部屋。彼はふとスイッチを付けたテレビで、自殺した男の現場レポートを観てしまった。

若い男が入水自殺して、助け上げられた時には死んでいた。恋人だったという男が抱き着いて泣き叫んでいて、レポートではここが有名なハッテンスポットだったこと、男同士三角関係のもつれだったこと。このニュース番組を観て、平山の足は自然とそのスポットに向かったのだ。

平山の記憶に蘇って来る、そのハッテンスポットは、海に面した断崖絶壁、下界から隔絶された楽園のような場所で、平山は家族旅行で来ていたのにフーとその場所に誘われ、そこでサーファーの若者小津が恋人と全裸で濃厚な青姦を繰り広げている現場を目撃してしまっていた。

行く当てもなく紀伊半島のひなびた町に着いた平山は、サーフィンを終えてマリンスーツ姿の小津とほんの一瞬擦れ違い、心にザワザワと予感が立つ。彼の足は自然とハッテンスポットに向かい、隔絶された世界に向かうために洞窟を向けて剥き出しの禿山を登り、砂浜に着いた。

平山は、砂浜で小津が恋人と全裸でFUCKしている幻影を観た。その直後、サーフィンを終えた小津がマリンスーツ姿で海からやって来た。驚く平山は、小津と会話し始める。小津は恋人を喪ってしまい失意の中にいた。一週間前に消えた彼が、入水自殺して遺体で見つかったんだ・・・

小津は、恋人と紀伊半島のこのハッテンスポットでラブラブの日々を過ごしていた。ところがある日、ヘンな電話がかかって来る。受話器越しの声は「君が洞窟で先に積極的に誘って来たんだ。君の身体が忘れられない。もう一度会いたいんだ」その言葉を聞いて、慌てて電話を切る恋人。

小津は、恋人が刹那的な浮気をしたことを知った。彼は恋人を許そうとするが、罪悪感に苛む恋人は姿を消した。そして入水自殺。平山は「君が、あのニュースで報道されてた男だったのか!」驚き、同時に小津に心惹かれていることに気づいた。小津は死にたい心情の平山のことを理解していた。

小津は、絶望感に苛まれる平山の表情が、自殺する寸前の恋人の表情とそっくりだと思った。砂浜でマリンスーツを脱いでいきなり全裸になる小津「来て!」平山はそれまでノンケだったが、自分の本心に気づくと、全裸で砂浜に横たわる小津の勃起したイチモツを懸命にフェラした。

平山は、全裸の小津を抱きかかえるように持ち上げると、正常位で挿入、ガンガン犯し、体位を変えるとバックでパンパン突いて射精した。もう砂浜は陽が落ちて夕焼けに染まっている。ギュッと手を握り合った二人は全裸のまま海に入り、その姿はどんどん小さくなり、やがて見えなくなった・・・

海から来た男

大木裕之「あなたがすきです、だいすきです」

ENK
04 /28 2022
国立映画アーカイブで、大木裕之「あなたがすきです、だいすきです」

高知の田舎で同棲するゲイ青年カップルの日常、浮気と嫉妬と仲直りと、ちょっとしたズレが誤解を生んで悩んで打ち明けてスッキリして、コミカルな要素も交えつつ大木監督が素の自分自身を描き込んだと思う、90年代青春映画を代表する傑作。

知る人ぞ知る自主映画作家の雄、大木裕之のフィルム撮り商業映画デビュー作で、ピンク大賞(1994年の第2位!)のみならず海外でも注目を浴びた「I like you,I like you very much」という英題も付いている。90年代前半の薔薇族映画館で本作が上映された時の衝撃が想像できる。

ジャンルとしては一旦、ケイポルノとされてはいるが、内容としてはカラミの部分も穏やかでゲイカップル若い二人の微妙な心理的距離感を描き出した心理ドラマで、しかも恋愛に絞って表現しているだけでなく、感覚に挑戦した映像作品のイメージもある。

大学生のカップルと対をなすように、一回り年上の男二人を配置、更には電車内で一目惚れしてしまうノンケ男性とその彼女、行きずりで野外乱交に及ぶ同世代の青年たち、そしてインタビューを試みる相手は性にウブな校生や中学生、幅広い年代を登場させる。

高知の田舎の長閑な原風景もいい。ゲイカップルの話というと都会のイメージがあるが、田舎にだってゲイはいるんだぜ!土讃線朝倉駅は一時期、ゲイのメッカになったんじゃないのか?(←ウソ流すなよw)ホームが簡素な駅だからこそあり得る、毎日会う人への片想い。

ところで、この朝倉駅、JRの土讃線以外に路面電車の停留所もある。。カップル二人は朝倉駅も朝倉停留所もどっちも利用し、常に大学や高知市内の繁華街への移動手段として機能し、朝倉駅の登場は帰宅を意味する。

東京では恐らく撮れないような、スクリーン一杯を白く染めるような輝く青空。これがモチーフの映画だと思う。登場人物がキラキラ輝いてる。浮気して、されて、悩んだって青春してるカップルの瑞々しさが青空や青い海に溶け込んでる。

ただし、高知ロケだからって、名所は一切登場しませんのであしからず、はりまや橋とか桂浜とか、別に物語の途中にワンカット挟んでも良さそうなものだけど、ここで強調したいのはあくまでも日常性、ケの部分だ。(←ケジラミのことじゃないよw)

大木監督の故郷である高知県に住む、大学生のユウ(渋谷和則)は恋人シン(CHANO)と同棲中。なのに、駅で見かけたノンケのイケメン青年タカ(西本タカ)に「あなたがすきです、だいすきです」と告白。手ブレ撮影と同録でフェイクドキュメントを演出した異色の実験映画であると思う。

90年代、佐賀照彦と並ぶゲイ映画界のスターだった渋谷和則が主役。同棲中の恋人がいるのに一目惚れしたイケメンに告白、これを知った恋人も負けじと駅でナンパしてきた年上の男(大木裕之w)に付いていき、2回も抱かれてしまう、浮気合戦の物語であるw

物語自体は平板で、渋谷が演じるユウはノンケの青年タカ(西本タカ)に一目惚れするがタカには彼女もいて、あっけなくフラれる。でも、ユウの恋人のシン(CHANO)は行きずりのタカノさん(大木裕之)と浮気セックス、同棲中のユウとシンに摩擦が生じる。

ユウもシンもイケてるセックスにはありつけず、シンはタカノさんに電話相談して家を訪れてみたらタカノさんこと大木裕之は何と田中要次おじさんと同棲中。コントみたいな三人のシュールなすれ違いトークになんだか異空間にいるような可笑しさがこみ上げるw

ユウはユウで、タカさんに彼女がいることに衝撃を受け、駅でナンパしてきた二人の青年(北風久則&松前直也)と夜のハッテン海岸で(←こんな場所にハッテンスポットがあるのかよw)激しく3Pしてしまう。ああ、イケてない。シンもユウもイケてないw

キーワードはもちろん「あなたがすきです、だいすきです」都合、5回登場する。冒頭でユウが駅を降りて歩いているタカに突然の告白の場面。そして大木監督にナンパされたシンが部屋で正常位で抱かれながら思わず呟いてしまう場面。シンは負けず嫌いなのだw

三回目は、タカに一目惚れしたユウが大学の学食でヘッドホンで音楽聴きながら「♪あなたがすきです、だいすきでーす♪」とラップ調で歌い、隣の女の子に「違う曲じゃないw」とツッコミ入れられる。4回目はシンが大木裕之とギアが一段上がったねっとりFUCKで。

物語そのものは置いといてwこの作品が高い評価を得たのは、「ひょっとしてこれ、ホンモノの素人のゲイカップルのドキュメントなの?」と思わせるような演出と画作り。高知の田舎を舞台に、手ブレカメラはカップルの日常を、追いかけるように見つめ続ける。

冒頭、ユウが見知らぬ青年タカに「あなたがすきです!」と告白した瞬間、カメラのフレームに大量の光が差し込んでしまい、スクリーンが真っ白になる。上映事故か!いや、違う、これも演出(笑)最近では当たり前になったで行くドキュメンタリーの先駆けか。

ユウが見知らぬ青年タカに一目惚れして起こしたたった一つの事件、愛の告白をしてしまったことは、ユウの気持ちをラップを口ずさむほど軽くするのと正反対に、シンが見知らぬ大木裕之監督に駅でナンパされ家に付いていき、一発ヤられちゃう騒動にハッテン!

ユウはタカに対するタカなる胸の思いが抑えきれず、シンに「どうすればいいの?」と相談するが、知ったこっちゃねえw逆にシンはユウの心が自分から離れていくことを悟り、心の中にピューピューと寂しい風が吹き抜けた。

シンはユウの気持ちが自分に無いことを寂しがり、大木監督の自宅を再び訪れ、今度は自分用のセクシーブリーフを買ってくれたことに興奮。「ケツを突き出してみろ」アナルを舌で愛撫され、そのままバックから挿入されよがる。

シンは、ユウへのジェラシーから大木監督とアバンチュールを重ねる。でも、シンはユウに感染されるように自分はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。そこで、スーパーの前に座る校生に尋ねた「もし君の彼女が電車で他の男といちゃいちゃしてたらどうする?」校生は「その男のこと、良く知らないけどぶっ飛ばしてやりたい」

シンは答えが見つからず、駅の公衆電話から大木監督の自宅に電話で相談を入れた「僕、どうすればいいの?」シンが大木監督の家に行くと、田中要次が居た(笑)二人は同棲中だった。バボさんは、大木監督が若い青年と浮気してると知り強烈に嫉妬する(←この時のバボさんのジェラシー演技が最高に面白いw)

大木監督はバボさんに「2回しか寝てないんだ、たった2回だけなんだよ?」と言い訳し「俺、風呂に入って来る」と何とか修羅場を脱出wここでバボさんとシンが二人だけ部屋に取り残される異空間(笑)バボさんはシンに「毛じらみがとれないのよ」そして「あんたのも見てあげる」シンの股間を大開脚させ、ピンセットでチンコの周辺を突き突きしたw

バボさんは「どうやら、毛じらみはいないようね」大木が風呂から出てくると、目の前で愛し合い始めた。居場所がなくなったシンは大木の部屋を出た。その頃、ユウは駅のホームでナンパされた青年二人と夜のハッテン海岸で3Pハッテン、二人は同時に浮気していた。ユウは汽車で高知の街に出た。

ハンバーガーショップで一人客の男に色目を使うが気味悪がられる。路面電車で帰宅しようと電停で待っていたら、大木の家から出てきたシンが居合わせた。二人は口喧嘩する「お前が悪い」「いや、お前の方が悪い」罵り合った。ここで、本作のクライマックス。

突然駆け出したユウを、シンが夢中で追いかけ始めた。路面電車の線路の上を、車に当たりそうになりながらも駆け抜ける二人。いつしか二人は、どちらがどちらに追いつくという訳でもなく、並走しながら夜の街を走り抜けた。ユウとシンは帰宅した。

二人は仲直りし、サンドイッチを作って河原にピクニックに出かけた。草むらの上に敷いていた白いシーツを、二人は布団のように被り、戯れた。ユウはシンに言った「あなたがすきです、だいすきです」ここで二人の目の前に現れる、見覚えある女性。

ユウとシンに笑顔で手を振る女性は、ユウが一目惚れしたタカの彼女だった。そして、その後を部活のトレーニング中であろう、タカがカッコよくバク転をしながら通り過ぎて行った。「あの人、やっぱりカッコいい」ユウはシンのことも、タカのことも、LOVEというよりLIKEで大好きだ。

あなたがすきですだいすきです

あなたがすきです 、だいすきです

かわさきひろゆき「綺麗に咲いた」

ENK
12 /20 2021
光音座で、かわさきひろゆき「綺麗に咲いた」 脚本はかわさきりぼん。

西南戦争に敗れ非業の死を遂げる寸前の薩摩藩士・中村半次郎(重松伴武)の脳裏に去来する、10年前薩長同盟を企む坂本龍馬を京都近江屋で暗殺した甘い記憶。そこには薩摩と官軍の暗殺集団抗争における男同士のロマンチックな愛があった。ゲイムービーと言うよりも史実に基づいたw本格的時代劇の見応えある力作。

史実に基づきつつ、隠された歴史の真実を暴き出す!坂本龍馬を暗殺した男、中村半次郎は西郷隆盛にアツい想いを抱きながらも、龍馬にも片恋をしてしまう、純情な好青年ゲイであった(笑)激動の日本近代史を動かした男たちの性欲を、余すことなく描いた憂国の男色絵巻です!

史実を掘り下げれてみれば、現代の政治においても政局に影響を及ぼす長州山口、天皇制国体維持の道しるべとなる尊王攘夷、韓国を始め海外に対する軍備、国交を巡る問題など興味深いが、ゲイポルノなので(笑)そんな政治や思想のことは思い至らず、娯楽歴史絵巻を楽しみたいw

観終わって最初の感想「これ、成人映画の中でも低予算のはずのゲイポルノで、ここまで時代考証したのスゴすぎ!」幕末から明治維新直後の激動の日本史を実写化するのって大変なことなのに最後までやり切ったことに脱帽!一体どれだけ予算オーバーしたんだろう(笑)

坂本龍馬暗殺については諸説ある。本作では後に桐野利秋と名を改めた薩摩藩士中村半次郎を暗殺者本人に見立て、憂国の士軍団の一員に描く。三島由紀夫の盾の会と同じように(笑)薩摩暗殺軍団を男色の世界に染め上げ、見廻り組の人斬りもまた、男色家であるw

物語は慶応3年(1867年)に起きた、近江屋事件と呼ばれる坂本龍馬暗殺、明治10年(1877年)に勃発した薩摩藩と官軍による西南戦争、という実際に起きた2つのノンフィクションを題材としており、尊王攘夷や制韓論に対する考えの違いから起きた、暗殺事件と内戦がモチーフである。

ENK配給だから企画は駒田慎司なんだけど、ラインプロデューサーがゲイポルノでは珍しく深町章で、演出と脚本がかわさきひろゆき&りぼん夫妻。クレジットによればキャスティングが石動三六で「よくぞまあ、ここまで集めたり」成人映画とは思えない絢爛絵巻的豪華さw

政界の重鎮、西郷隆盛をかわさきひろゆき、中岡慎太郎をなかみつせいじ、坂本龍馬を岡田智宏が演じている、イイ配役なのに登場する場面はほとんど無く(笑)でもそんな中で坂本龍馬役の岡田智宏はチャラい龍馬で(笑)最後の最後においしいとこ持ってく感じもするw

女優も里見瑤子、麻生みゅうの二人登場するが、瑤子の方は冒頭で人斬りに着られる完全斬られ要員で、登場は一瞬なのでノンクレジット(笑)みゅうの方は坂本龍馬の妻お龍という大役だが、見どころは上半身裸で「人斬りよ」おっぱい要員なのか?ゲイポルノでは不要w

コンセプトは、死ぬ間際に半次郎が坂本龍馬を討った時の返り血を官能的に思い出しながら「綺麗に咲いた」といまわの際に言い残した最後の一言。この一言を回想する形で時代を遡って展開されるので、60分強の尺は全て、半次郎が死ぬ直前の、ほんの一瞬の出来事です。

深町監督(いや、本作ではプロデューサーだろw)らしいのは、濡れ場が物語本編と完全に切り離されていて、恐らく濡れ場をそっくり抜いても物語は成立する。っていうか、都合3回しかない濡れ場(竹刀で折檻シーンを除くw)が長くてエロくて、かなり実用的(笑)

薩摩ゲイ軍団は、主人公の中村半次郎(重松伴武)はじめ、リーダーの木太郎(柳東史)茶坊主、だけどロン毛の丈太郎(高橋剛)坊主の誠心(佐々木共輔)対して見廻り組の秋介(野村貴浩)の5人で、組んずほぐれつ、坂本龍馬を討つのも大事だが、男色に耽ることがもっと大事(笑)

木太郎と茶坊主、半次郎と茶坊主のFUCKシーンは白褌一丁で絡み合う、数あるゲイポルノの中でもかなりエロい方に入るんじゃないか?クライマックスは半次郎が秋介に捕らえられて折檻され、その目の前で茶坊主が秋介にガンガン犯される。ヤッてるの茶坊主丈太郎ばかり(笑)

深町監督の良心(←だから監督じゃないってばw)が咲かせる折檻シーン3態。一度目は半次郎が憧れの西郷どんとのプラトニックラブに割って入ろうとする坂本龍馬を(笑)茶坊主の丈太郎に「これで追い出してくれ」竹刀で折檻して貰う、こじつけが過ぎる爆笑カットw

二回目の折檻シーンは木太郎(笑)京都見回り組と密通していた疑惑が持ち上がり、リーダーに下剋上宣言した坊主の誠心が木太郎に「本当のことを吐け!」と折檻。要は(要は、じゃねーよw)佐々木共輔が柳東史を全裸緊縛し狂ったように竹刀で叩いている警策っぽい画w

三回目の折檻シーンが一番面白くて(←面白いのかよw)半次郎が乗り込んだ見回り組の秋介に捕らえられ「自白しろ!」(←こればっかりw)竹刀で打たれた後、仰向けに転がされ「さあ、吐くんだ」股間を揉み揉みされ、バキュームフェラされ、気持ちよさそうじゃんかw

見廻り組の秋介は、自分が龍馬を討ちたいもんだから、半次郎に「計画をゲロしろ」とシックスナインの体勢で猛然とフェラしながら顔面騎乗したチ〇コで半次郎をイマラチオ。気持ち良すぎて吐けないんじゃねーの、これ(笑)終いに口内に思いっきり射精しちゃってるしw

冒頭、主人公である中村半次郎は、西南戦争で官軍に追い詰められ、熊本の地で瀕死寸前。大将の西郷隆盛は既に自害しており、彼は薄れゆく記憶の中で、今から10年前に西郷と意見を異にする土佐藩士坂本龍馬を京都で討った日の壮絶な思い出を最後の記憶に、あの世に立とうとしていた。

半次郎にとって、西郷は絶対の存在である。貧しく盗賊になった彼を捕らえた薩摩藩。でも西郷は食事をさせ心の入れ替えを働きかけ、彼は絶対忠誠を誓うのである「俺が生涯を賭けて愛するのは西郷どんのみ!」彼のプラトニックラブは人生をも突き動かした。

そして今、彼は京都のとあるアジトで仲間たちと坂本龍馬暗殺の機会を虎視眈々と伺う。リーダーは茶坊主と恋仲になり男色に耽っているが、好色坊主にモーションかけられてもきっぱり断る半次郎。そうです、彼は西郷どん一筋!彼のためなら暗殺でも何でもする人斬り。

でも、半次郎には薩摩での瞬間的な、甘いときめきの記憶があった。彼が桜の樹の下を歩いていると、イケメンの男が着物姿の女とデートしている。半次郎が会釈して擦れ違いざま「なあ、これから一緒に寝ないか?」と声をかけて来るその男とは、後で気づくが龍馬であった。

半次郎は京の地で龍馬を討たなければならぬのに、夢の中にどうしても薩摩の桜の樹の下で逢った男のことが出て来て忘れられない。「茶坊主、俺の身体からあいつを追い出してくれ!」竹刀で打ってもらうが、どうしても彼のことが忘れられず、思わず涙が溢れ出す半次郎。

茶坊主は「あなたを苦しめる、そんな奴が許せない。これは嫉妬なんかじゃない」二人は白褌一丁でFUCKするが、ここに返って来る茶坊主の情夫でリーダーの木太郎「お前、何をしておるか!」嫉妬に狂う木太郎は激しく茶坊主を打った。そして、決戦の時は近づく。

誠心の耳に入った怪情報「木太郎が官軍と密通しておる!」リーダーたりとて容赦せぬ、全裸に剥いて拷問する誠心に「俺は見廻り組と情報を交換していただけだ」と許しを請う木太郎に「見廻り組など信用できるか」吐き捨て、竹刀を振るう誠心は、木太郎を破門した。

龍馬の動向を下見に、寺田屋へ向かった誠心、半次郎、茶坊主の三人。すると、窓からお龍(麻生みゅう、本作は木の実葉名義)がおっぱい丸出しで「人斬りよ」と叫ぶ。恐らく龍馬と湯あみの最中だったのだろう、一旦は退散する半次郎。でもあの女、いつぞやの桜の樹の下で?

ある日、半次郎たちのアジトを嗅ぎつけた見廻り組の秋介が乗り込んでくる(←野村貴浩は着物に髷が似合い過ぎて龍馬に寄せ過ぎw)いきなり誠心を斬り殺すと、「お前ら、企んでおるな?」半次郎を白褌一丁に縛り上げ、「こいつを吐かせろ」茶坊主に命令をくだした。

茶坊主は冒頭、誤って奉公人(←里見瑤子だがクレジット無し可哀想っすw)を斬り殺した謎の存在。彼こそが見廻り組の秋介との密通スパイであった。でも愛する半次郎を竹刀で打てない茶坊主に苛立った秋介は「こういうのもよかろう」半次郎の前で茶坊主を犯し始めた。

秋介は正常位でガンガン茶坊主を犯して射精しフーと一息つくと、今度は緊縛され転がされた半次郎の白褌の上からチ〇コを揉みしだき「さあ、吐け、吐くんだ」勃起したイチモツを口に含むとジュボジュボとバキュームフェラする秋介に「き、きもちいい」恍惚の半次郎。

敬愛する西郷どんを想い決して口を割らない半次郎を責め立てるため、シックスナインの体勢になって、バキュームフェラしながら顔面騎乗でチ〇コを半次郎の喉奥に突っ込む秋介。半次郎の顔の上を秋介の汗だくのケツが蠢く様「吐け!」「吐かぬ!」の攻防を一層盛り上げる!

結局、半次郎が龍馬暗殺計画を吐く前に口内射精してしまった秋介(笑)屈辱に震える半次郎は、スキを突いて夜道の秋介を忍者姿で急襲、胸を日本刀でグサリと突き、加勢したバナナマン日村似の二人の護衛(後で石動三六と広瀬寛巳と判明w)も叩き斬った人斬り半次郎。

そして本作のハイライト、来たよ、来ましたよ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!グウォーンとセンチメンタルで躍動的な劇伴が流れる中、夜道を一人で駆け出す半次郎。狙うは龍馬の首一つ!近江屋を襲撃し、歓談中の坂本龍馬と中岡慎太郎(←岡田智宏「分かっちゅう」の台詞面白すぎw)を発見。

二人とも死んでもらいます!「なあ、桜の樹の下で酒でもゆっくり飲もうや」と声をかけた龍馬の顔を見た半次郎はびっくり仰天!彼こそが、薩摩の地の桜の樹の下で出会ったときめきのイケメンだったのだ。愛する龍馬さん、でも死んでもらいます!刀剣を突き合いせめぎ合う、半次郎と龍馬!

半次郎が刀をサッと振った瞬間、龍馬の額に血しぶきが溢れ、画面が白地に変わり、その上に滴る鮮血(←この場面、どこかで観た気がw)龍馬の血がしぶきを上げたあの瞬間を思い出し、西南戦争の敗残兵となった半次郎は一言呟く「綺麗に咲いた」彼はこと切れ、死んだ。

キャスティング兼出演者の石動三六さんからコメントいただきました。ありがとうございます(^^)/

予算内です(笑)。衣装や刀はかわさき監督の劇団のもの。あとゲイムービーは女優さんのギャラがかからないので楽ですね。キャスティングはほとんど監督任せで諸々の準備と現場を一日手伝いました。でもなぜかあんなクレジットに(笑)。

深町監督と里見さんは三日間フルに現場だったと思います。里見さんは実質的な助監督でした。あと、深町プロデューサーの話し相手(笑)(里見さんのギャラは?)それは言えない(笑)

綺麗に咲いた

柴原光「イルカは海に帰る」

ENK
10 /25 2021
光音座で、柴原光「イルカは海に帰る」 脚本は五代響子。

30歳過ぎてもニートの根暗なチンピラ(伊藤猛)が、自宅で飼育する趣味の熱帯魚。彼は同棲中の哀しいウリ専ボーイ(山本清彦)を熱帯魚に見立ててイルカと名付けた。硬質な画にARB、仲野茂BAND、野島健太郎、高原秀和の劇伴が鳴り響く。とろけるように甘くてセンチメンタルな青春映画の逸品。

1992年、ゲイポルノ史上を代表する傑作「ほんとうの空色」を発表し衝撃デビューを果たした柴原監督が、自ら設立したオフィスバロウズの制作でENKが配給した2作目は1994年、画も音楽も力強さがグンと増す一方で、物語があまりにも弱く、見ごたえは十分だがカッコで魅せる仕上がり。

なにか一つのきっかけがあったら、傑作に化けていたかもしれない。「ほんとうの空色」を超えたかもしれない。少なくとも、画と音楽の出来は楽勝で超えている。野島健太郎だけでなくARBも仲野茂も、ついでにw高原秀和も出て来たんだから。でも物語が弱い。これが本作の全て。

ENK・オフィスバロウズの制作で、ホンが五代響子で、なのになぜ池島ゆたかの名前がテロップに無いのだろう?成人映画としてのバランスに欠けている。やまきよオンリーで4回の濡れ場はキツいし、そもそも濡れ場と物語の融合ができてない。だからそれぞれが自己主張してる。

中尾正人の撮影も、野島健太郎の音楽もこれ以上無いほどにパーフェクトと思う。北沢幸雄の傑作「思いはあなただけ」に匹敵する素晴らしさだ。なのに、伊藤とやまきよの恋愛譚が、川瀬陽太と下川ツトムのように美しく紡がれないのは、逆に画と音楽が出張って邪魔してしまう。

タイトルから、城みちる「イルカに乗った少年」のような映画を想像してしまいがちだが(←誰でもそうだろw)主役の松田(←優作イメージなのかなw)こと伊藤猛が部屋で根暗に飼っている水槽の一番大きな熱帯魚に「イルカ」と名付け、いつか海に還してあげたい、というお話w

伊藤猛が演じるチンピラは、実にカッコよくてオリジナリティに溢れ、「松田」という役名はむしろ逆効果。ウリ専ボーイ山本清彦はまだ若くて初々しく髪をキンキンに染め耳にピアスをしてモッくんイメージと思われるが、どこからどう見ても本田圭佑止まりなのが本作の限界だ(笑)

ダブル主演が、伊藤猛と山本清彦という組み合わせ自体が意外w山本は後年「やまきよ」の芸名で旦々舎作品で怪演を連発、でもデビュー当初はこんな初々しくて哀しきゲイボーイだったなんて。彼は伊藤に濃厚FUCKで愛されるだけでなく、清水大敬とタケにボロボロに犯されますw

熱帯魚にイルカと名付けている時点で、着想は分かるけど物語を真剣に紡ぐ気なんてねーだろwと思ってしまう。そうです、本作はあくまでも、高原秀和「SAND DREAM」(←タイトル合ってるかな?」仲野茂BAND「夢喰い虫」ARB「乾いた花」を劇中で劇的に使用するのか最大目的。

本作の主題歌と言える、あの!石橋凌率いるロックバンドARBの「乾いた花」無軌道なチンピラ伊藤猛がウリ専ボーイやまきよと殺人、ヤク大金持逃げで海外に高飛びしようとして防波堤で射撃され絶命。血に染まる防波堤のカットに被さるように「乾いた花」このラストシーンはカッコいい!

ライフル銃乱射シーンでゲスト出演も果たす、仲野茂が歌う「夢喰い虫」。やまきよがウリに出て伊藤もヤクの取引に向かう、劇的な場面で流れ、その前座なのか?高原秀和が自身で作詞作曲し自慢のノドで歌う、甘いメロディは歌詞に「水槽の熱帯魚」「ジグソーパズル」「人生ゲーム」モチーフのオリジナル?

最大の商品価値は、どうしてもやまきよの濡れ場。っていうか、本作の役名は「じゅん」なんだけど、余りに似合わないw山本清彦って呼ぶのも違和感あるし、やっぱり、やまきよはやまきよだよな、うん。本作では観客をシニカルな笑いに導く怪演は許されずw結構マジメに熱演している(笑)

とにかく、伊藤猛!30歳過ぎても定職に就かずボロアパートのど真ん中にでっかい水槽を置いて熱帯魚を飼育し、人生ゲームやジグソーパズルに熱中する、どこからどう見ても中二病の男っぷりが絶品で、他の共演者なんかどうでもいいと思えてしまう。画的には伊藤猛だけがサイコー!

無気力なチンピラ伊藤の口癖は「ロマンチストも30歳過ぎればただのバカ」ウリ専するやまきよにせっせと貢がせて、熱帯魚の世話とジグソーパズルと人生ゲームしかすることがない伊藤の人生は既に詰んでいる。切ないチンピラの抒情的な物語はパンクロックとは相性が悪いw

脇を固める清水大敬、日比野達郎、タケ、平口広美、それに仲野茂(笑)全員が一癖も二癖もあって、やまきよが抑え気味の演技をしてしまったばかりに、話がなんだかとっ散らかっちゃうよ。やまきよはドナドナ的なウリ専なので、清水とタケにこれでもかと鬼畜FUCKされるw

冒頭、スクリーンを水槽に見立てて、大きな熱帯魚と小さな熱帯魚がつがいで泳いでいる。まるで伊藤とやまきよみたいだ。伊藤はチンピラ、やまきよはウリ専ボーイ。金は無く、扇風機で熱さを凌ぐ貧乏くさいボロアパートで二人は恋人同士熱くFUCK。もう同棲して1年が経った。

伊藤は熱帯魚の飼育が趣味で、やまきよに餌を買いに行かせる。なぜか(笑)米軍基地のフェンス沿いを歩くやまきよに重ねてタイトルインはカッコいいが、映画本編と関係ないwっていうか、米国とか戦争とかをファッショじゃなくファッションで語る、悪い意味で90年代っぽさ。

伊藤は、つがいの熱帯魚の大きな方に「イルカ」と名付けている。「イルカは今は小さいけど大きくなったら海に還す」が彼の口癖。大きい真鯉は俺で~小さな緋鯉はやまきよで~みたいな感じで(←話が変わってるだろw)ネーミングセンスなさすぎ、どうしてイルカ縛りなんだよw

伊藤が大好きなのは、インドアでやまきよと人生ゲームやるのと一人でジグソーパズルするだけ。やまきよは大好きな米軍基地のフェンスに伊藤と一緒に出掛け、屋根の上で飯食って、伊藤が「米国と戦争だ!」「その後はアジアを侵略だ!」「今度は勝つぞ!」全てが軽すぎるw

米軍基地の傍に停めてあった、車から見つけた拳銃。伊藤は持ち帰り水槽に沈めると「こんな拳銃一丁じゃ何にもできねえ」と呟いた。でも、伊藤がナルシスチックに一人で黄昏ているまさにその瞬間、やまきよはとんでもない目に遭っていたのです。だって、客が鬼畜の清水大敬なんですよ!

清水はサディストで、やまきよを部屋に入れるなり「脱げ」「自分でシコってみろ」オナニー姿を眺めながらチンコに股縄をかけ「気持ちいいか」と罵倒。ワンワンスタイルにさせ「根元まで突っ込んでやる!」バイブを手に「大腸を破壊してやる、クソを垂れ流してしまうようにな」

やまきよをワンワンスタイルにした清水は、「カー、ぺッ!」とやまきよのアナルに向かって何度もタンを吐き、張り型にも「ペッぺッ」とタンを付け、「根元までぶち込んでやる」と挿入。清水はAVでタンツボFUCKを連発しタコビデオ化した前歴があるが、ゲイポルノにはハマるw

「ケツの穴を目一杯広げろ」アナルを犯し、「どうだ、デカいだろう」何度も繰り返し射精。2万円を口の中に突っ込んで「ざまあみろ」「今度は髪を黒く染めて来い」(←髪の毛までイチャモンつけるのかよw)清水のような鬼畜客にも淡々と耐えて従った、やまきよはプロ(笑)

伊藤がジグソーパズルに夢中になっている時、退屈なやまきよは数ピースをそっと水槽に投げ入れた。伊藤は「おかしいなあ、足りないんだよ」いつまでたってもジグソーパズルは完成しない。そのジグソーパズルは海の中を泳ぐイルカであった。やまきよは、今のままで良かった。

伊藤は、やまきよと人生ゲームで遊びはしゃぐ。金塊が見つかったと大喜びする伊藤。家を買って大金を支払い不機嫌なやまきよ。伊藤は「俺は子供の頃から、人生ゲームは得意だった。でも、本物の人生は失敗ばかりだけど」やまきよは仕事に出かけてしまい、伊藤は一人でゴールした。

ボロアパートの前の川辺にテーブルを置いて呑気にラジカセで音楽を聴いている伊藤。すると、甘い歌声で、おお!これは高原秀和のオリジナルソングじゃないですか?熱帯魚とか戦争とか革命とか、歌詞が思いっきり青臭くて堪らないんですけどw歌声が甘い、甘すぎる美声だ!

高原秀和が、スタッフでも出演者でもないのに(笑)柴原監督の師匠と言うだけで1曲披露するその劇伴とともに現れる日比野。彼はヤクザで伊藤が舎弟分という設定なのだが、伊藤より弱そうで困る(笑)日比野はヤクの運び役というバイトを伊藤に与え、バーのマスターを紹介した。

そのバーも、マスターっていうのが平口広美で(笑←笑うとこじゃないだろw)仲野茂BAND「夢喰い虫」のメロディに重ねて平口が伊藤に童話「アリとキリギリス」の寓話を読み聞かせ始めた時点で悶絶www平口がたどたどしい台詞で働き者のアリと怠け者のキリギリスの話してるw

伊藤は苛立って「もう帰る!」アリとキリギリスのようなくだらねえ話をヘタクソな台詞で延々と喋りやがって、ということではなく(←それはお前の感想だろうがw)伊藤は「俺ってキリギリス?ってことはマジメに働けってことだな」と席を立とうとするが、「ちょっと待て」

平口がビニール袋に入ったカプセルの風邪薬のような奴を取り出して再び悶絶www(←どうやら、これがヤクらしいw)伊藤は「キリギリスも困った時はアリさんに助けられることもあるんだな」もうアリだかキリギリスだか分かんないけど、伊藤猛の演技力でギリギリ持ってるw

伊藤は平口に「この男にこれを渡せ」タケの写真を見せられた。ところでみなさん、タケって言われて分かります?笑い飯の西田、トータルテンポスの藤田みたいなルックスと言えば分かってもらえますでしょうか?長髪に口ひげで長身。で、彼はゲイなんです、やまきよを買うんです(笑)

伊藤は、ヤクの取引に出かけ、やまきよはウリに出かける。どっちもお相手がトータルテンポスの藤田、いや、笑い飯の西田、いや、タケなんです(←逆に分かりにくいだろw)タケはやまきよを金で買った。で、清水は鬼畜過ぎたからやまきよのペースじゃなかったけど、本来はウリする時に段取りがあるw

やまきよは、タケの股間に顔を埋めてしゃぶしゃぶ「お前、名前は何て言うんだ?」「何とでも呼んでよ、どうせ一夜限りだし」ここでタケが突然の激怒「なんて無礼な奴なんだ!」(←コントかよw)ワンワンスタイルやまきよの黒パンツの上からアナルをガンガン責め悶絶させたw

コトが済むとやまきよは「ふざけんじゃねーよ」シャワー中のタケの財布から金を盗もうとして見つかり怒りに燃えるタケは正常位でやまきよを犯し始め首を力一杯絞めて窒息させようとする。「ヤバい!」やまきよは近くにあったガラスの灰皿でタケの頭を殴りつけ、タケは流血して即死。

今度こそ、ホントにやべえ!タケの死体をそのままに金を持ち逃げしたやまきよは、部屋に戻って熱帯魚水槽の前で反省の体育座り。タケがヤクの受け取りに来なかった伊藤がガッカリして帰宅すると、( ゚Д゚)やまきよ、お前いったい、どうしたんだ!二人は置かれた運命を知った。

伊藤はタケとのヤクの取引に失敗、やまきよはタケを殺して大金を持ち帰った。タケに渡すヤクも、タケの所持していた大金も今は手元にあり、タケを殺してしまった「やべえ、俺たち、真っ黒黒じゃねか!」(←当たり前だよw)二人はこのまま海外への逃亡を思いついた。

熱帯魚だから暖かい場所に行きたい。カリフォルニア?カリブ?カジノなんていいんじゃね?夢が膨らむままにFUCKする二人。おお!伊藤猛は黒パンツの上からやまきよのモノを懸命にパンフェラ、正常位でガンガンFUCK。ゲイポルノ常連でも伊藤のこんな真剣FUCK見たことねえw

伊藤はやまきよが実はタイプだったのか?ここまでヤラなくていいような気もするのに、フェラもFUCKもガンガン本気モードで、清水大敬の鬼畜罵声FUCKも霞んだ(笑)コトが済みまったりする二人の目の前に、拳銃を持った日比野アニキが「伊藤、てめえ」と激怒しながら登場だ!

でも、弱そうな日比野を制するように、ライフルを持って颯爽と登場した仲野茂が乱射を開始(笑)伊藤の大事な熱帯魚が入った水槽を粉々に撃ち砕いた後、やまきよの肩もヒット。伊藤は無我夢中で、米軍から奪った拳銃で仲野を撃ち殺し、日比野の胸もヒットして撃ち殺した。

やまきよは、肩を日比野に撃ち抜かれ、息も絶え絶えに「伊藤さん、キスして」と迫る。伊藤とやまきよの口づけに野島健太郎のロマンチックな劇伴が重なる一瞬は、クラシックな名作洋画の手触りで非常に(・∀・)イイ!!ここで映画を閉じてしまった方が、良かったのかもしれない。

伊藤は、怪我を負ったやまきよを抱きかかえ、線路の上を歩き、機関車の横を通り過ぎる。野島健太郎のロマンチックな劇伴が流れ「俺は親に「お前なんか産まなきゃよかった」「お前はろくな死に方をしない」と言われたんだ」「伊藤さん、俺も一緒です」何このカッコいい急展開w

伊藤猛が松田優作に見えるぜ!的なチンピラはどこまでもチンピラの哀しい運命。防波堤まで辿り着き、ようやくイルカを海に帰す直前、伊藤は何者かにヒットされ絶命。胸ポケットにしまったガラス瓶が落っこちて割れて、熱帯魚のイルカは海に帰ることなく伊藤とともに死んだ。

伊藤がイルカを海に帰すことが出来ぬまま、防波堤は海に向かって鮮血に染まり、誰もいなくなった。ARB「乾いた花」が、チンピラ伊藤猛の最期を飾るレクイエムのように流れ出す。ああ、カッコいいMVだなあ。このラストシーンを観るだけでも、一見の価値があるよ、この作品。

イルカは海に帰る

樹かず「キミニ惚レテル」

ENK
05 /17 2021
光音座で、樹かず「キミニ惚レテル」 脚本は岡輝男と五代暁子との共同。

ミュージシャンを目指しゲイAV男優のバイトで食いつなぐ若者(千葉尚之)が、高校の同窓会で親友と再会。建築士を目指していた彼とは、将来の夢を語った仲。千葉は難病に罹った親友のため、掴みかけたメジャーデビューの夢を諦めて、骨髄バンクドナー登録チャリティコンサートで、自作曲「お前との約束」を親友のために熱唱。ベタだけどどストレートに心に沁みる、青春映画の良作。

夢に向かって走る若者たちの姿。私が毎週のように観ているピンク映画だって、出演者もスタッフもきっと大きな夢を実現するためのステップとして、映画を作り、映画に出ている。だからこそ、粗削りな本作にだって、出演者やスタッフの一人一人が抱える夢があり、ロマンチックで甘美な熱情を感じ取ることができる。

2004年、樹かず(現、樹カズ)の商業映画監督デビュー作で、400本以上のピンク映画、AVで活躍した彼の集大成的なゲイポルノ、というよりも、長年の下積みへのはなむけの如く、池島ゆたかがプロデュース、小林悟と新田栄の両巨匠も制作協力に名を連ね、業界あげて渾身の力作である。

樹カズは本作で36歳にして映像作家デビューだから、年齢としては少し遅めである。数年後、自身のピンク映画百本記念に自伝的作品である「NEXT」を撮った池島ゆたかがプロデュースし、セメントマッチとして制作、重要な役で出演もこなす、池島監督の世界が色濃く見える。

長年にわたって助監督を務めた佐藤吏が監督デビューした際も、出演者やスタッフが大挙出演し、華々しい門出となったが、本作もこれに劣らず、成人映画界の大先輩が樹を後押しする。でも樹かずは佐藤吏とは違う。あくまでも俳優として自分の描きたい世界を等身大で描く、これはこれで肩ひじを張りすぎない等身大の青春映画。

製作総指揮が駒田達郎で、プロデューサーが池島ゆたか。脚本は岡輝男と五代暁子が共同で執筆し、制作協力に小林悟、新田栄、国沢実が名前を連ねる。友情出演?で平賀勘一と佐々木基子を始め、森山龍二、銀治、石動三六が続々と登場、メインは青年二人の淡いラブストーリー。

ミュージシャンを目指すゲイの青年(千葉尚之)と、建築士を目指すノンケの青年(神名弘)千葉のミュージシャンになる夢を一緒に追いかける同棲青年(山名和俊)の物語だが、三角関係ではなく、山名は千葉の掴んだチャンスを知って身を引き、千葉は神名にカミングアウトしない。

ゲイポルノというジャンルを逸脱するのは、神名弘は最初から最後までノンケ青年で通し、濡れ場は一切無く、ゲイ青年の千葉は山名と何度の濃厚FUCKを繰り広げる。神名の恋人と入院先の看護婦を演じる、香山貴子と船原かおるはハッとするほどの美人だが、濡れ場無しで通過する。

千葉尚之は本作の5年後、池島ゆたか「NEXT」で池島本人と思われる青年の「俳優として成功したい」という若き日のもがきを熱演するのだが、既に本作で「ミュージシャンとして成功したい」という青年の熱い思いをスクリーンにぶつける、観客に心が伝わる、イイ役者だと思う。

歌うピンク御殿でギターを手に持ちハーモニカを加えて恥ずかし気にステージに登場したリアル樹カズさんと、本作で千葉尚之が演じる主役の省吾が完全にダブって見える。樹さんも若き日、ミュージシャンの夢実現のためピンク映画で身体を張りもがいたのかも、想像してしまった。

ゲイ映画界のトムクルーズとまで言われた樹かずが、リアルにゲイかどうか?なんて、どうでもいい些細なことで、どちらかと言えば、彼が本作の主役の省吾をゲイに設定し、憧れのノンケ親友である難病の浩平のために自作の曲を歌う。ベタ過ぎる展開ではあるけど、表現したいことそのもの。

ゲイの省吾とノンケの浩平の恋愛だけでは、感動を呼ぶドラマにはなるが、ポルノ度が著しく低下する。そこで(そこで、じゃねーよw)池島始め、ピンク映画界のマイスターと呼ばれる人たちは「ゲイポルノとしてどう完成させるべ?」と色々と工夫を凝らしており、これが面白い。

最高の飛び道具は、ゲイAV監督の平賀勘一である(笑)自らもどスケベな少年偏愛ゲイで、明らかに二十歳過ぎの若者に「初めての撮影、行ってみようか!」「初めてのフェラチオ、行ってみようか!」できるだけAV男優を若くロリっぽく見せる手腕に平賀監督の変態性を感じるw

冒頭、監督のはずの樹かず本人がブリーフ一丁でゲイAV撮影に臨み、チンコをしごかれて豪快なカルピス発射。大満足の平賀監督はニッコニコで、次の撮影に千葉尚之演じる省吾を呼ぶ。彼はもう何度もゲイAVに出演しているが、平賀監督は彼を「うぶな高校生設定」で撮り始める。

平賀監督がカメラを回し始めると、省吾が恥ずかしそうに「新倉直人、18歳です」に、にいくらなおと、だとお?これ、小林悟監督の変名じゃねーかwここで最初から大爆笑。小林悟の制作協力ってここだけなのかなあ「名前、貸しましたよ」って。掴みはOKで(笑)ここから映画は本筋に入るw

省吾は自分のグルーピーの男と同棲し、性欲を発散しているが、実は憧れの浩平のことしか頭にない。高校の同窓会で再会してしまった二人は、自転車で箱乗りするイケメン同士。でも二人には決定的な違いがあった。省吾はゲイ、浩平はノンケ。互いにそんなこと、知らなかった。

省吾は帰宅すると悶々とした気分を鎮めるように、関西弁で迫り来る同棲中の男と乱暴にFUCK。でも、彼の記憶に蘇ってくるのは、高校時代に授業をさぼって校舎の屋上で、省吾がギターで自作曲「お前との約束」を練習してると「いい曲だね」と声をかけて来た初恋の人・浩平。

浩平は優等生で将来の夢は建築士。ダルい授業はさぼって屋上で自習中だった。省吾と浩平は将来の夢を語り合い、教師の森山龍二にたいそう叱られたが、森山の脂ぎった頭髪を眺めて笑いが止まらず、その話題で河川敷に行き、チンコの大きさや剥けてる剥けてないでおおはしゃぎ!

省吾はデモテープを芸能事務所に送り、その中から佐々木基子が社長を務める事務所に採用された。夢にまで見たミュージシャンの道。隣でフォークソングを熱唱していた吉永幸一(現、こういち。たつのすけの盟友らしい)彼とは路上ミュージシャン仲間だったが「一足、お先に」

省吾は浩平と突然、連絡が取れなくなり、彼が難病で入院していると知る。超美人の恋人(←残念ながら脱がずw)は「もう私と会わないっていうの」と泣き崩れるが、浩平はなぜか、省吾とは会ってくれた。彼の難病は治療に多額のお金が必要、省吾は事務所に前借りを申し出る。

基子社長はデビュー前の省吾の申し出に「先行投資したのよ!」と唖然。でも、いつかイケメン省吾を喰いたいと画策する基子社長は「いいわ、私のポケットマネーで。その代わり私の言うことも聞いて!」それは省吾の意にそぐわない、ビジュアル系バンドとしてのデビューだったw

省吾は訳も分からぬまま楽屋で、モロにビジュアルバンドっぽい軍服の衣装を着せられ、濃いアイシャドーを塗り、渡された曲は「水の華」(←ルナシーの河村隆一いイメージなのだろうかw)彼は嫌々ながらも「これは浩平の難病を治すためだ」心を鬼にしてビジュアルバンドへの道に進むことを決めた。

省吾は浩平に治療費の用立てが出来たことを報告。浩平は「お前、なんでそこまで俺のことを」超美人の看護婦(←残念ながらこの人も脱がずw)が「まるで恋人同士みたいですね」省吾は飛び上がりたいほど嬉しかったが、浩平にはそれは仲の良い親友ですね、程度のことであった。

基子社長は省吾に、大事なメジャーデビューの勝負ライブ番組を7月7日(日)15時と伝えた。でも、省吾は先に約束してしまっていた。実は浩平は急性骨髄性白血病で、骨髄ドナーチャリティコンサートの出演を予定、その時間も同じ、7月7日(日)15時、小さなライブ会場だった。

基子社長にテレビの出演キャンセルを申し出る省吾。でも社運をかけた基子が了解する訳もない。彼は浩平との約束を守るため、ライブ会場に向かった。このチャリティコンサートは蝶ネクタイに銀ラメスーツの石動三六が司会、銀治が長身の相方と演じる漫才は悲惨にスベっていたw

そして、司会者の石動から「本日の主役、省吾さんの「登場です!」あの新進ミュージシャンの省吾なのか?ダレてた観客たちが座り直して膝を正して、省吾の弾き語りに耳を傾ける「僕の大事な友人のために、この曲を捧げたいと思います。それでは聞いてください。お前との約束」

ゲイポルノ館のスクリーンに、ミニライブ会場でギターを弾きながら熱唱する千葉尚之の姿が映る。いいなあ、こういう場所で観るからこそ、ええんや!(←なぜか急に、関西弁w)彼の思いは、闘病中の浩平に届くのだろうか?看護婦の話では、今夜がヤマだと言っていたのだ。

そして翌日、病室の窓から外を眺める省吾。ベッドにいた住人はもういない、無人のベッド。浩平、死んでしまったの?いや、浩平は生きていた。車いす生活になったが、スキンヘッドになったが、命は取り留めた。省吾は車いすの浩平を押して、外に出て散歩デートを楽しんだ。

省吾は浩平に「好きだ」と打ち明けることもできぬまま、借金だけが残った。路上では吉永幸一が相変わらず自分だけの世界に浸り込んで夢中でシャウトしている。省吾もこれまでの日常に戻らなければならない。彼の足は、平賀監督がゲイAV作品を量産している撮影現場に向かった。

海パン一丁の省吾に、平賀監督が高田純次張りの無責任C調気味に「じゃあ、初めてのフェラチオ、行ってみようか!」省吾は海パン姿で仰向けに寝ている男優のチンコを咥えると、猛然とフェラ(←これで初フェラチオかよw)エロいい画が撮れた平賀は大満足「また、よろしくな」

省吾が謝礼を受け取り、浩平の入院費の足しにしようと去り、エンディングテロップが回る。そして最後に再び平賀監督が登場「君、初めてなの?」ここで本作に初登場の真央はじめがブリーフ一丁で自信満々に「初めてです!」神名弘のスキンヘッドに書いた「監督 樹かず」で終w

キミ二惚レテル

伊藤清美・ソルボンヌK子・五代暁子「不思議の国のゲイたち」

ENK
01 /18 2021
光音座で、伊藤清美・ソルボンヌK子・五代暁子「不思議の国のゲイたち」 プロデューサーは池島ゆたか。

伊藤清美、ソルボンヌK子、五代暁子による3話オムニバスのゲイポルノで、総合プロデューサーは池島ゆたか。女性監督ならではぶっ飛んだ発想、アッと驚くゲイたちが次々と登場。タイトルは順番に、伊藤清美「エチカ」ソルボンヌK子「世界の中心(まんなか)でアイを叫んだけだもの」五代暁子「在宅介護」主人公は順に樹かず、中野貴雄、野上正義。愛を叫ぶ98kgの重戦車、中野貴雄の大暴走がスゲエ!

ピンク映画女優の伊藤清美、サブカル界隈では有名な漫画家ソルボンヌK子、池島作品ですっかりお馴染みの脚本家五代暁子。三人揃って監督デビュー作、しかもゲイポルノ。池島ゆたかがプロデューサーとして三作を統括し、それぞれの個性が色濃く出ていて、並べると味わい深いw

トップバッターの伊藤清美はイケメン2人に女性を絡めた三角関係のボーイズラブをオシャレに描き、ソルボンヌK子は暑苦しいデブたちが暴れまくるスラップスティックコメディを展開、そして最後に五代暁子が老人が美青年に昔の恋人の面影を見つけしっとりした老いらくの恋で締める、三者三様のゲイ模様を完成させた池島プロデューサーの手腕はさすが!

尺は20分ずつ均等ではなく、PART1の伊藤清美とPART2のソルボンヌK子は約15分、PART3の五代暁子に30分近い尺を与えている。伊藤清美のあっさりとしたBL映画と、ソルボンヌK子のシュールなデブ専ドタバタ喜劇は、あっという間にジェットコースターのように走り抜け、五代暁子が渾身のサイレント映画をじっくりしんみりと、心に染み入る。

五代暁子のPARTは昔懐かしセピア色のサイレントで、活弁士は竹久千鳥名義で五代暁子本人が担当している。だから、ガミさんの声も五代暁子なのだ(笑)睦月影郎の直伝と思われるw発禁本のようなエロい字幕を多用しつつ、老人と青年の台詞は全て五代暁子が朗読のように代読、世代を超えたノンケとゲイの心温まるドラマだ。

三人の女性監督は、エンディングの出演者紹介でようやく登場する。伊藤清美は、イケメンコンビの樹かずと木下敦仁を両脇に座らせ、頬に指を当ててしきりに「ここにキスしろ!」アピール。同時に両サイドからイケメンのキスを貰い、これは役得以外の何物でもないだろw

五代暁子は、ガミさんに向かって、野口青年を布団に仰向けに寝かせ足の指から丹念に舌を這わせてチロチロ愛撫を実演指導(笑)ガミさんが五代暁子を一旦は泳がせておいて「お前に演技指導される覚えはないわ!」とツッコむコントが可笑しい。五代暁子はなかなか芸達者だなあw

ソルボンヌK子は阪神タイガースの縦縞ユニに帽子、リアルに熱狂的な阪神ファンなのだろうかwPART2は暑苦しいデブばかり、とにかく出演者が膨大で、記念写真はPART1、PART3の出演者も合同だけど、大半がPART2の人だろ(笑)記念写真に写る80kg超のおデブさんたちの顔ぶれがw

PART1 伊藤清美「エチカ」

木下敦仁と恋愛中のイケメン樹かず。大学時代の友人村上ゆうは思い切って彼に愛を叫ぶが敢えなく玉砕。樹が「あ、忘れてた!」嫌な予感がして木下の部屋に駆け付けると木下はゆうとセックス中、実はバイだったのだw樹が忘れたのはトイレの大を流すこと。雨降って大海原に地固まったw

PART2 ソルボンヌK子「世界の中心(まんなか)でアイを叫んだけだもの」

3話の中で、これが飛び抜けて大問題作で(笑)「新世紀エヴァンゲリオン」オマージュ、でも舞台はデブ専ゲイバー。痩身のシンジ(中野貴雄)が巨漢101kgゲイバーオーナーのゲンドウ(川井正貴)に恋い焦がれ暴飲暴食して98kgのデブに変身(笑)

ゲンドウはSM好きで、シンジは自宅でマゾ特訓するが、貞操観念の無いゲンドウはカヲル(ミスターブッタマン、103kg)を鞭で責めていたw絶望したシンジはゲンドウの超巨根を目の当たりにし「目指せ15cm!」アナル拡張特訓を開始するw

シンジは四つん這いになり、まず細い木の棒、次にキュウリ、コンドームを被せたニンジン、そしてぶっとい大根にローションを塗ってウンチングスタイルでアナルを最大限に拡張!でも、ゲンドウはカヲルと巨漢同士で激しいセックスに耽るw

シンジは泣きながら「ゲンドウさん好きだ!」世界の中心で愛を叫ぶ(笑)でも、こんなにデブになっちゃって、M奴隷になっちゃって、おまけにアナルはガバガバになっちゃって、これから俺はどうしたらいいの?シンジは絶望し頭を抱えた。

シンジの前にデブ専ゲイバーのママ(快楽亭ブラック師匠、86kg)が登場「あんた、生きていれば、きっといいこと、あるわよ!」白フンドシをキリリと締めたデブ軍団A組、デブ軍団B組の80kgオーバーばかり、シンジを励ましてくれた(笑)

すると、何と言うことでしょう!シンジの目の前に、獣のように後背位でFUCKするゲンドウとカヲルが目の前に現れた。シンジは「これは幻なんかじゃない!」カヲルを押しのけ、バックからゲンドウのアナルを突き刺し、激しく犯し始めた!

シンジはゲンドウを責める快感に酔いしれ射精、すると、白フンドシ一丁のデブ軍団がシンジを囲み込み、わっしょい、わっしょい!一斉にチンコをしごき始めた。そして輪が解けると、シンジの顔には大量のザーメン。シンジこと中野貴雄のスクリーンに白濁液まみれの恍惚の表情(笑)

PART3 五代暁子「在宅介護」

3話の中で、これが圧倒的にまとも、というかしみじみと泣ける話。介護ヘルパーの若者(野口四郎)が老人(野上正義)の家に介護に訪れる。老人は大正10年生まれの76歳。生涯独身を貫き、戦後すぐに「私はゲイ」とカミングアウトした、市役所職員で福祉課の荒木太郎曰く「ガミさんは、凄くラディカルなお人」

野口青年はガミさんを甲斐甲斐しく世話するが、ガミさんはそんな親切心も何のその、台所でお粥を作る野口の裸エプロンを妄想し「グへへ」ガミさんは野口がお粥をこぼした隙に「勿体ない」と言い訳を付けて、野口の顔じゅうを舐めまわす(笑)福祉課の荒木が介護保険の手続きに来て「あの人はゲイだよ」ノンケの野口は思わず怯んだw

ガミさんは野口に、一枚の写真を見せた。セピア色のその写真には野口にそっくりな青年が映っていた。首にはマフラー。ガミさんは「あんたはワシの昔の恋人にそっくりなんじゃ」ノンケの野口は迷いつつ「一度だけなら・・・「そうか」遠慮がちに言いつつ、野口の身体じゅうを舐めまわすw

ガミさんにディープキスされ、身体をまさぐられているうちに、ノンケなのに何だか気持ち良くなってしまった野口は、ガミさんにそのまま正常位で犯された。ガミさんは「ああ、締まるよ」「ジュボジュボ」「ズズー」睦月影郎が書くような官能小説の字幕が二人FUCKをエロく描写、そのまま絶頂に達した。

ガミさんは「最後の思い出にセックスしてくれてありがとう」と野口にマフラーを渡した「( ゚Д゚)これ、死んだ恋人の形見なんじゃ・・・」ガミさんは野口に、どうしてもこのマフラーを着けて貰いたかった。このマフラーはガミさんが亡き恋人のことを思いながら手編みした心のこもったマフラー。

野口はガミさんに言った「僕、これからも訪問介護、頑張るよ!」野口を見かけた女友達は「何、このダサいマフラー!」と茶化すが、野口は気にしない。でもガミさんの身体に異変が起きた!自宅で彼は誰にも看取られることなく、ひっそりと息を引き取った。そうと知らず、野口は意気揚々と形見のマフラーをして、ガミさんの家に向かった。

不思議の国のゲイたち

横浜のロマンポルノファン

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世の中に映画は二種類しかありません。成人映画か、それ以外か、です(笑)
ロマンポルノを追っかけるうちにピンク映画もいっぱい観るようになってしまいましたw